シリーズ「作り手の想い」 第一回 新谷圭佑

今回から培養フォアグラを作っている弊社メンバーの想いを伝える「作り手の想い」シリーズを定期的に更新していきます。第1弾はフォアグラ生産チームの新谷圭佑さんです。

新谷圭佑さん
インテグリカルチャー株式会社 研究開発部 フォアグラ生産チーム所属
京都大学出身。前職では香料メーカーに従事。食べることが大好きで、学生時代は食べ物に関して1番うるさい(こだわりが強い)と言われていたそう。

ー本日はお時間いただき、ありがとうございます。まずは、学生時代にどんな勉強をされていたか教えて下さい。

新谷 僕は食品に関する学科にいまして、大学院もそこに入って、研究室は化学工学を使って食品製造に応用するみたいな分野の学問をやっていました。

ー食品系というと、卒業後は食品メーカーで働くイメージですか?

新谷 そうですね。同期も6、7割が食品メーカーに勤めていますし、僕も前職では添加物メーカー、香料メーカーに勤めていました。当時の研究はトクホの時代で、メタボ予防などの健康系が流行っていたんですが、僕としては美味しいものをたくさんの人が食べれるようにしたい、という思いがあって、作るほうが楽しそうだなと。

ー僕も食べることが好きなので、とても興味があります。もう少し教えて欲しいのですが、「添加物・香料」と美味しいものをたくさんの人が食べれるように、という点は繋がるのでしょうか?

新谷 はい、香料は食品を美味しく感じてもらうための素材なんです。例えば高級な食材を使わなくても、香料を工夫することで美味しさを感じてもらうことができます。いくら健康に良い食品であっても、美味しくないとみんな食べてくれないので、そういった点でとてもやりがいを感じていました。

ー具体的に、どんなお仕事をされていたのですか?

新谷 加熱によって出ている香りを温度や加熱時間をコントロールして、良い香りを出すという研究をしていました。香料で1番王道なのは柑橘で、柑橘やスパイスは生の香りなんですが、僕がやっていたのは調理で出てくる香りです。生肉を嗅いで何の肉か分かる人ってたぶんいないと思うのですが、焼くと肉特有の香りが出てくるじゃないですか。カレーも火を付ける鍋の中身を嗅いで何を作っているかは分からないですけど、煮込みだしたらわかる。
一般的には反応フレーバーとか、リアクションフレーバーといわれる分野ですね。

ーありがとうございます。香料メーカーのあとはインテグリカルチャーに入社されたのですか?

新谷 はい、そうです。

ーどんなところに興味を持ったのですか?

新谷 3点ありまして、1点目は新しいことをしたい、という思いでした。培養肉を作るという新しいチャレンジに惹かれましたね。2点目は環境問題にも昔から興味があって、どうせ働くなら社会貢献できるようなことをしたいな、と。3点目はお肉が食べれなくなるのが嫌だなと思いまして(笑)
反応フレーバーって大豆肉を肉の味にするという引き合いがすごくたくさんあったんです。それで大豆肉を食べる機会が多かったんですけど、ハンバーグなどの調理が多く、塊肉ではなかったんです。でも塊肉が食べたいなと思って・・・
そこから培養肉を知るようになって、将来的な伸びしろを考えると培養肉のポテンシャルはすごく高いと感じてインテグリカルチャーに入社しました。

ーご自身でインテグリカルチャーに入ってやりたいことのイメージってありましたか?

新谷 美味しいものをたくさんの人が食べられるように、というところに繋がるのですが、そのためには大量に製造する機会や装置が必要なのでそれを動かして実用化する、という点は興味を持っていました。新しい装置を動かしてみたいなと。

ー現在、培養フォアグラを作りにあたっては、どんなことを担当されているのですか?

新谷 大量生産に向けて大きい培養槽や装置を動かしたり、衛生管理をしたり、製造を安定させるための仕組みを作る、といったことをしています。

ー特にどんなことを意識してお仕事されていますか?

新谷 培養装置にはプラスチックのチューブや連結部品が数多く使用されます。これらは使用前に滅菌する必要があります。滅菌は加熱によって行いますが、熱い空気は冷める時縮むため、外気のほこりが入らないよう細心の注意を払います。冷めた容器に「シュッ」と空気の入る音が聞こえたときは、滅菌のやり直しです。気にしすぎなようですが、「まぁいっか」といった見て見ぬ振りは絶対にしないですね。少しでも気になるところがあったら、時間がかかっても最初から滅菌をやり直します。そして、これらのプラスチック部品は使用後には廃棄します。もし傷があると滅菌不良になるためです。

ーかなり徹底されているのですね。培養フォアグラの完成はそういった努力の結果だと思うのですが、完成したらどんな方に食べてほしいですか?

新谷 そうですね、まずは新しいものが好きな人に食べてもらえると良いんじゃないかと思っています。今はお肉が食べられなくなる、という逼迫感は少なくとも日本ではあまりないなと思っているので、最初はエンターテイメント的に楽しく、美味しく食べてもらえると嬉しいです。そして本当にお肉の供給が足りなくなる、となった時に従来肉は週2、培養肉を週5みたいになっていったら良いですね。でもそうなると、毎日肉なので、肉好きに食べて欲しいです、まとめると(笑)

ーありがとうございました。