インテグリカルチャー、細胞培養食品の商業化を加速させる新技術開発とその成果を論文として公開
―「食品としての製品化」を前提に、細胞培養試薬の安全性とコスト問題を同時に解決する新開発戦略―

研究開発

細胞培養技術の社会実装を目指すインテグリカルチャー株式会社(本社:東京都文京区、代表取締役CEO:羽生 雄毅)は、細胞培養

食品の商業化における高コストと安全性リスクという二大障壁を克服する、新たな開発フレームワークと、それに基づいた2種類の食品グレード細胞培養試薬「iDisper」「iCoater」を開発しました。

また、本開発成果とその科学的評価をまとめた論文を、本日2025年9月にプレプリントサーバー「ChemRxiv」にて公開したことをお知らせします。

本アプローチは、未知のリスクを管理可能なリスクへと転換し、既存の食品製造の枠組み内での細胞培養試薬を製品化する道筋を示すものであり、その科学的妥当性を示すことで、安全で安価な細胞培養食品の普及を大きく前進させます。

開発した2つの食品グレード試薬
1. iDisper(アイディスパー):動物不使用の細胞剥離剤 培養した細胞を剥がす工程で使用します。原材料は食品添加物である植物由来酵素「パパイン」と「クエン酸三ナトリウム」のみ。動物由来原料を一切使用しないことで、ウイルス汚染やアレルギーのリスクを排除します。性能評価では、市販の実験試薬と同等の細胞剥離効果と生存率を達成し、-20℃で8ヶ月間安定した性能を維持することを確認しました。
2. iCoater(アイコーター):すぐに使える細胞培養用コーティング剤 細胞の足場となる培養表面のコーティングに使用します。原材料は食品規格のゼラチンのみで構成され、実際の食品製造で用いられている加熱殺菌の考え方を採用。これにより、原料から製造工程までを食品製造の規格に落とし込んだ、製品の製造を可能にします。

【本研究論文のテーマ:未知のリスクから、管理可能なリスクへ
本アプローチは、ブタ由来原料などが持つウイルス汚染などの「隠れた未知のリスク」を、アレルギー表示などで対応できる「管理可能で目に見えるリスク」へと転換させる点にあります。これにより、既存の食品安全の枠組みを活用した製品化への道筋が立ち、消費者の信頼醸成にも繋がります。
今回の発表は、原料の基礎開発から製品の社会実装までの一貫した食品規格の細胞培養試薬の製品化の戦略を示すものであり、安全で安価な細胞培養食品の普及を加速させるための包括的な設計図となります。

インテグリカルチャー株式会社 代表取締役CEO 羽生 雄毅のコメント 「細胞培養食品を誰もが安心して楽しめる日常の選択肢とするためには、安全とコストの壁を、科学的根拠をもって乗り越えることが不可欠です。今回、私たちが提唱する『食品法規制プレチェック』という新しい常識とその成果を、透明性の高い論文という形で公開できたことを誇りに思います。これにより、細胞培養業界全体の持続可能な発展に貢献できると確信しています。」

公開論文情報(iDisper)

  • タイトル: A Food-Grade, Animal-Free Cell Dissociation Alternative Product Developed via a Food Regulatory Pre-Check Framework
  • 著者: Hiroaki Hatano, Misaki Sawada ,Misaki Kitsukawa ,Azusa Hayakawa ,Hiroaki Kondo ,Ikko Kawashima
  • 掲載サーバー: ChemRxiv
  • 公開日: 2025年9月2419日
  • DOI (デジタルオブジェクト識別子): 10.26434/chemrxiv-2025-g3jdp

公開論文情報(iCoater)

  • タイトル: A Food-Grade Ready-to-Use Cell Culture Coating Agent Developed via Food Manufacturing: A Dual Technical and Regulatory Approach
  • 著者: Hiroaki Hatano, Misaki Sawada ,Misaki Kitsukawa ,Azusa Hayakawa ,Hiroaki Kondo ,Ikko Kawashima
  • 掲載サーバー: ChemRxiv
  • 公開日: 2025年9月19日
  • DOI (デジタルオブジェクト識別子):10.26434/chemrxiv-2025-9gfsq

【本件に関するお問い合わせ先】 
E-mail: tanaka@integriculture.com
事業企画部:田中