「感動レベルのやつって残ってるんですよ。 」 未来食研究家 桑名シェフに聞く培養フォアグラの監修秘話

今回は培養フォアグラ、スペースソルトなど弊社食材の料理監修にご協力いただいている桑名シェフにインタビューをさせていただきました。


桑名シェフについて
未来食研究家兼シェフ
桑名 広行氏

ロイヤルパークホテル在籍中に、カナダモントリオール総領事館にて公邸料理長を務める。2010年に外務省より公邸料理長賞を受賞。現在はシェフとしての活動と並行して、人工培養肉や藻類など最先端のフードテックベンチャー等とのコラボレーションにより、未来の食に関する研究活動を行う。

ー本日はお時間をいただきありがとうございます。まずは、培養フォアグラの調理をしていただくことになった経緯について教えてください。

桑名 3年前、4年前くらいになるんですかね。インテグリカルチャーさんがまだ会社として立ち上がる前だったと思うんですけど、もう準備されていて、もう立ち上がるという手前の段階で、思考実験というのをやられていたんです。コミュニティを毎回、一公(弊社CTO)さんとか羽生(弊社CEO)さんが中心となって、リアルテックの方とインテグリカルチャーの方で、参加希望者を募って、毎回テーマを掲げて、どういう考えに至るかというのを開催されていて、そこに料理人というカテゴリの人がなかなか参加してもらえないということで、知人を介して、超面白そうなのでぜひ参加させてくださいというのがきっかけです。

―最初に培養肉、培養フォアグラというワードを聞いたとき、どんなイメージを持たれましたか

桑名 実は参加する前から、いろいろな方に培養肉の話だけでなく、培養肉が普及した未来とか、大きなビジョンについても話す機会があってベースは出来てました。最初は、自分の中に取り入れるだけで頭が筋肉痛になるくらい、けっこうぶっ飛んだ話ししてるな、とかって思って聞いてたんですけど、それのおかげで、インテグリカルチャーさんの会合とかに入ったときには、超面白そうみたいな、ワクワクみたいな感じしか僕自身はなかったです。

ー今は料理をする際は畜産肉を使われているかと思いますが、将来的に培養肉を使う機会も出ることには抵抗感よりもワクワク感が強いですか?

桑名 僕は培養肉自体が新しい食材だと思っています。今はお肉を理想として日々研究されていると思うんですけど、お肉に代わるとは思ってないんです。僕はその過程もすごく大事にしてほしいなと思っていて。過程で、お肉を理想にしているから、まだほど遠いんだけど、その状態って他に世の中にないよねという部分って絶対あるんですよ。僕らからすると、その状態ってめちゃくちゃ面白いなと思っています。

ー仰るとおり、培養肉の完成を目指して研究していますが、その過程も大切ですよね。実際に試食されてみて、率直に味の感想があれば伺わせてください。

桑名 率直な感想は、すごって感じでした。金串の先にちょこっとつけたのを、バーナーで炙ってちょっと火を入れて、舌の上に乗っけたんです。そうしたら、もうパーンと来るわけです。だから、これはすごいなと思って。このときはやっぱりフォアグラという先入観があるので、すごいフォアグラだな、みたいな印象ではあったんですけど、でも、後々ずっと残っているので、やっぱり。感動レベルのやつって残ってるんですよ。

―代替の食品というよりは、別の食材としてインパクトがあったという感じですね。

桑名 そうですね。代替品とは思わなかったです。ゆくゆく培養肉が世に出て、初期の頃は代替の印象はあるかもしれないですけど。将来的にタンパク質不足が問題になっている中で、こういう新しいものが選択肢として入ってくる、というのは僕は期待しか無いです。クオリティもすごく高いので。

ー一種の感動みたいなものを感じていただけたのですね。

桑名 僕はそうでした。僕は嘘をつけないタイプなので。そこでおいしかったので、もう絶対協力しようと思えたんですよ。そこで食べて、え、何これ、おいしくないじゃんとなっていたら、たぶんこんなに熱を持って関わっていないと思うので(笑)

ー今後、培養フォアグラの商業化に向けて研究を進めているのですけど、桑名シェフのレストランでも取り扱いたいって思っていただけますか?

桑名 いや、もうぜひ使わせて欲しいです。つくばの学園都市も近いので、新しい食材に興味ある人も多いかなと思っていて。

ーありがとうございます。最後に、今後のインテグリカルチャーに期待されることについて、桑名シェフの思いがあればぜひ伺いたいです。

桑名 理想はあってしかりだと本当に思っていて、ただ、そこに向かうのって、やっぱり距離が離れていれば離れているほど精神的にけっこうしんどくなってきたりっていうのも、僕もインテグリカルチャーさんほどは遠い先ではないですけど、そういうときってやっぱりあって。
完成形のイメージだけを追求するだけではなくて、その仮定で面白いと思ってくれる人もいるんじゃないかなと思っています。よく言う「早く行くなら1人で行け、遠くへ行くなら皆で行け」というやつかなと。
ワクワクが漏れ出るよなインテグリカルチャーさんであって欲しいなと思っています。物が間違いないのは、僕はもう確信しています。継続して頑張って欲しいですね。
もっと多くの人に知ってもらえたら良いなと思います。


ー桑名シェフ、本日はありがとうございました。