カルネット コンソーシアム、「日本初の培養肉製造ライン」の整備方針について検討、東京女子医大 清水教授も交えて細胞農業の基礎研究から事業化までの取り組みを議論 〜インテグリカルチャー、2023年度第4回カルネット コンソーシアム運営委員会を開催〜
細胞から食品や原料などを作る「細胞農業」の実現を目指すインテグリカルチャー株式会社(本店:東京都文京区、代表取締役:羽生 雄毅、以下「当社」)は、当社が運営する細胞農業のオープンイノベーションプラットフォーム「CulNet®︎(カルネット) コンソーシアム」(以下「コンソーシアム」)の2023年度第4回の運営委員会(以下「本委員会」)を開催いたしました。本委員会では、コンソーシアム参画企業全14社に対して、2024年度から当社が開始する日本初の「培養肉(細胞性食品)の生産」についての取り組み、海外の同業界の最新動向、アカデミアの研究状況等を共有いたしました。
昨年12月に農林水産省が公募した「中小企業イノベーション創出推進事業」において、インテグリカルチャーは「CulNet上清を活用した細胞性食品の生産システムの実証」の事業採択を受け、2024年度から日本初の培養肉生産ラインの実証試験を開始いたします。本委員会では、参画企業各社にいち早く同生産ラインの整備状況や生産体制等を共有し、本格稼働に向けた検討と次なる開発要素についての議論を深めました。
参画企業各社からは、低原料数の食品基礎培地「I-MEM(アイメム)2.0(参考リンク)」や低コストバイオリアクター、高効率培養バッグ、栄養成分供給、細胞農業向けマイクロキャリア等の現在取り組んでいる共同研究の成果が紹介され、培養肉産業の事業化に向けた幅広い開発が進んでいることを共有いたしました。
当社並びにコンソーシアムにおける成果物は、当社が2024年4月に予定している細胞農業業界向けのマーケットプレイス「(仮称)勝手場(英語名:Ocatté Base)」での販売を順次予定しています。「(仮称)勝手場」では、細胞農業に参画を目指す企業や団体に対して、培養肉の生産で必須となる、より高い安全性が見込まれる食品原料由来の培地をはじめとする資材、更にこれまでの研究開発で培ってきた細胞農業の関連情報や経験を提供し、開発期間の大幅な短縮をともに目指します。
左:東京女子医科大学の清水教授
右:サーキュラーセルカルチャーを活用した細胞農業システムで、増殖因子分泌細胞はCulNetシステムを利用
また、本委員会では、東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 所長・教授 清水達也 先生にも登壇していただき、培養肉における最新の研究状況について講演していただきました。
清水先生からは、今後培養肉生産の普及に伴って、培養液を構成する栄養素の源となる穀物栽培による環境負荷が大きな課題となってくること、それを解決するため藻類を用いた新たな培養肉製造システム「サーキュラーセルカルチャー(以下、「CCC」)」を開発中であることなど最新の研究状況を紹介していただきました。CCCは、藻類から得られる栄養素で動物細胞を培養し、動物細胞の培養で使用した廃液を藻類で再利用する、資源循環型の培養肉製造システムで、当社も参画する「ムーンショット型農林水産研究開発事業(参考リンク)」で取り組んできた成果です。コンソーシアムでは細胞農業による低環境負荷を実現するためのキーテクノロジーの一つとして今後も注目をしていきたいと考えています。
当社としては、コンソーシアムの皆様とともに細胞農業の将来を見据えつつ、培養肉の商業生産・事業化の実現に向けて取り組んでまいります。
第4回コンソーシアム運営委員会の参加者 最前列左から3番目は当社CEO羽生、その右隣は清水教授
インテグリカルチャー株式会社 代表取締役:羽生 雄毅のコメント
細胞農業については、特に国外にて既存技術の延長の限界が見えてきた中、「第2世代」技術への期待が一層集まっている状況にあります。「第2世代」技術を最も効果的に開発できるところに勝機があり、コンソーシアムは正にそこに当たると確信しております。
■ CulNet® system (カルネット システム)とは
カルネット システムは、動物体内の臓器間相互作用を模したシステムです。当社は、ラボスケールの実証実験において、カルネット システムによる血清様成分の作出に成功しました。これにより、細胞培養で必須であるとされていたFBSや成長因子を添加しない、細胞培養を実現しました。FBSは、コストとアニマルウェルフェアの両面により課題があると考えられており、代替が求められています。カルネット システムは、FBSや成長因子を添加しない「低コストな細胞培養」を実現する細胞農業のプラットフォーム技術として期待されています。
■CulNet®️(カルネット) コンソーシアムとは
2050年には世界人口が100億に達すると見込まれ、エネルギー、飼料、土地、水などの枯渇により、これまでの方法ではタンパク質の供給が追いつかなくなることが危惧されております。食肉に代わるタンパク質源として、植物由来原料などが商品化されるとともに、より食肉に近い代替タンパク質として動物細胞由来の培養肉が注目されていますが、生産コスト、安全性、大規模化などの点で課題が山積しています。そのため、カルネット コンソーシアムは、様々な領域で高い技術力を有するの企業様に参画していただき、培地、足場、培養装置などの課題を解決し、将来的なサプライチェーンを構築することを目的として、2021年4月1日に設立されました。カルネット コンソーシアムは設立3年目を迎え、参画企業は14社(2024年2月14日現在)となりました。
カルネット コンソーシアム詳細:https://integriculture.com/product/
■カルネット コンソーシアムへの参画企業(14社、50音順、2024年2月14日現在)
インテグリカルチャー株式会社、A Laboratories合同会社、旭化成株式会社、ダイダン株式会社、大和製罐株式会社、株式会社荏原製作所、株式会社浜野製作所、日本たばこ産業株式会社、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社、住友理工株式会社、大陽日酸株式会社、他3社
■(仮称)勝手場(英語名:”Open Cellular Agriculture Technology Transfer Ecosystem” Base:Ocatté Base)とは
(仮称)勝手場は、細胞農業における食品原料資材や細胞農業における情報の提供を目的としたインテグリカルチャーの細胞農業向けマーケットプレイスです。勝手場は、台所(キッチン)を指し、室町時代の武家社会において、使用人が主人の目を気にせずに談笑することのできる文字通りの勝手(自由)にふるまう事のできた場所であったことが語源とも言われています。
時代を経て、勝手場はいつしか親子のコミュニケーションの場となり、「食生活を通じた教育」である食育や、今日の日本食の中心地となりました。本サービスでは、世界中の誰でも台所で料理をするのと同じように培養肉を調理できる未来の実現と、その先の新たな食文化の開花を期待し、日本初の培養肉生産ラインで使用する食品原料由来の細胞培養資材や、カルネット コンソーシアム参画企業の成果物を提供いたします。
インテグリカルチャーでは、これまでの培養肉の研究開発の経験と蓄積から、食品原料由来の培地をはじめとする資材や、細胞農業における関連情報や経験は、同分野の検討・事業化をおこなうための必須要素であると考えています。本サービスでは、これらの必須要件をいち早く一般に開放・提供することで、細胞農業に参画を目指す企業や団体が、よりスムーズに検討・事業を開始できるような環境の構築をサポートします。これにより、細胞農業業界の早期形成と拡大に繋げ、インテグリカルチャーのミッションである「細胞農業インフラの発展と普及」を実現いたします。インテグリカルチャーは、本サービスを通じて、世界に先駆けて細胞農業の産業化を目指し、将来的な培養肉における食文化の開花を目指しています。
2024年度は食品原料由来の細胞培養資材の販売からサービスを開始し、2025年度以降はコンサルテーションサービスの開始も予定しています。
食品原料由来の資材のラインナップ(2024年4月時点)
・細胞培養基礎培地 I-MEM1.0
・細胞分散液
・細胞凍結保存液
・細胞接着促進コート剤
【本件に関するお問い合わせ先】
インテグリカルチャー株式会社 お問い合わせ窓口
<info@integriculture.com>
受付担当
事業開発部 鞆(とも)
研究開発部 カルネット コンソーシアム研究開発担当 波多野