世界初 臓器間相互作用を用いた培養肉生産方法を樹立
―無血清基礎培地によるニワトリ・カモ肝臓由来細胞の培養法―


■ 安価な食品原料による無血清基礎培地を開発

インテグリカルチャー株式会社は、臓器間相互作用を原理としたCulNet® system (以下、カルネット システム) で無血清基礎培地を用いて、ニワトリおよびカモ肝臓由来細胞培養に世界で初めて成功いたしました*1。研究用試薬原料から、全ての原料を機能代替とコスト低減を達成する食品原料へ置き換えることに成功しました。これにより、世界各国の培養肉メーカーが課題としている「安くて食べることができる無血清基礎培地」をいち早く実用化しました。インテグリカルチャーの基礎培地(製品名: I-MEM)とカルネット システムによる培養コストは、動物血清を用いた培地と比較して約60分の1になることが試算されています。当社では培養肉第一弾として、培養フォアグラ製品のリリースを本年度中に目指しています。

■ 従来の培養方法では動物血清が不可欠

一般的に、動物細胞を培養するためには5-20%量の動物血清を添加した基礎培地が用いられます。血清がないと細胞は栄養不足に陥り、増殖はおろか、長期間生き続けることもできません。血清には成長因子、アルブミン、その他数百種のタンパク質が含まれており、細胞の増殖には血清の成分が不可欠でした。しかし血清は大変高価で倫理的問題もあるため、世界中で代替品の開発が競われています。従来の血清を添加した培地で1ポンド (約450g) のチキンナゲットを作るには、3000米ドル (約32万円) もかかると言われています*2。

■ CulNet® systemにより血清様成分を製造可能に

インテグリカルチャーでは臓器間相互作用を用いて血清様成分を作り出し、細胞を培養する技術「カルネット システム」を開発しました。カルネット システムは複数の”フィーダー細胞”を培養するバイオリアクター (フィーダー槽) と、製品となる細胞を培養するバイオリアクター (プロダクト槽) から構成されています (図1) 。

(図1)カルネットシステム模式図

フィーダー細胞とは、プロダクト槽の製品となる細胞に適した血清様成分を放出する細胞のことです。1つのフィーダー槽には1種類の臓器細胞が入っており、複数のフィーダー槽が連結されています。全ての槽内は糖やアミノ酸などの基礎的な栄養を含む培地で満たされ、それらを含む組織液が全体を循環する仕組みになっています。カルネット システムの最大の特徴は、フィーダー槽が血清代替となる成分を放出し続けることです。フィーダー細胞は臓器間の相互作用により自らを含む臓器ネットワークを維持しながら、プロダクト槽の細胞を増殖・成長させる培養液を製造するのです。社内検証では、カルネット システムの定期的な基礎培地の交換だけで、130日間以上細胞培養が維持されました。フィーダー細胞は臓器間相互作用により血清様成分を放出しており、その全タンパク質解析を行ったところ、アルブミン、トランスフェリンなどのタンパク質が検出されました。カルネット システムのもうひとつの特徴として、フィーダー槽に入れる臓器細胞の組合せによってプロダクト槽で増える細胞の種類が変わる点が挙げられます。インテグリカルチャーでは数多くのスクリーニング実験により、ニワトリやカモ肝臓由来細胞を効率よく増殖させる最適な臓器細胞の組合せを発見しました(特許出願済み)。

■ CulNet® systemは、動物血清を使うよりも細胞を速く増殖させる

ある臓器細胞の組み合わせで製造したカルネット無血清培地を用いると、動物血清を用いた培地 (ウシ胎児血清を10%含んだ基礎培地) よりも肝臓由来細胞の増殖が速いことが分かりました (図2、図3) 。その速さは1.5〜2.5倍であり、この結果から肝臓由来細胞を増やすには、カルネット システムを使用することで、動物血清が不要であることがわかります。また、従来よりも短期間で細胞を増やすことが可能になるため、商用生産において生産効率の向上、および大幅なコスト削減につながることが期待されます(図3)。

(図2)カモ肝肝臓由来細胞の増殖曲線
(図3)ニワトリ肝臓由来細胞の増殖曲線
カモ肝臓由来細胞 培養開始から3日後の様子

■ CulNetパイプライン - 受託研究開発のご相談受付開始

インテグリカルチャーは世界各国の培養肉メーカーが課題とする「安価で食べられる無血清培地」をいち早く実用化し、細胞培養に成功しました。細胞培養技術の産業応用は広く、化粧品原料、皮革、医薬品などの素材開発も可能です。また、動物種は鳥類のみならず哺乳類、魚類、甲殻類、昆虫なども対応可能です。インテグリカルチャーは装置・培地・素材・製品・マーケットを創り出す細胞農業の総合プラットフォーマーを目指しています。今後も「生物資源を技術で活かし、健やかな社会基盤を創る」という企業ミッションのもと、細胞農業バリューチェーン構築を目指します。
CulNet パイプライン 受託研究開発のご相談は info@integriculture.com へお気軽にご相談ください。

■ 基礎培地 I-MEM(アイメム)製品情報

商品名:I-MEM
一般名称:粉末食品
アレルゲン:大豆
内容量:要問合せ
賞味期限:1年間
保管条件:冷蔵
使用上の注意:開封後ただちに使用。オートクレーブ滅菌はできません。

基礎培地の販売は本年度秋頃を予定しています。
営業窓口: imem@integriculture.com

*1: 2022年3月28日時点の自社調べによる。 
*2: 参照元
Tech Crunch https://jp.techcrunch.com/2020/08/03/2020-08-02-future-fields-is-tackling-cultured-meats-biggest-problem/ accessed on 2022. 3.10.
*3: CulNet はインテグリカルチャー株式会社の登録商標です。

■会社概要
会社名:インテグリカルチャー株式会社
代表取締役CEO:羽生 雄毅
設立:2015年10月23日
本店:東京都文京区本郷4-1-3 7階 ※登記上の本店
新宿オフィス(東京女子医科大学内):東京都新宿区河田町8-1 TWIns 3階 N101
湘南事業所:〒251-8555 神奈川県藤沢市村岡東二丁目26-1 湘南ヘルスイノベーションパーク 12-15 BW1M-2130
事業内容:汎用大規模細胞培養システム “CulNet System”を用いた有用成分、化粧品、食品、細胞培養肉の研究開発製造  

PR窓口: pr@integriculture.com