インテグリカルチャー、培養肉の新たな製造手法が環境に与える影響及び経済価値の評価法に関する研究によりカーボンプライシングに貢献へ
〜滋賀県立大学、株式会社エイゾスと共同で実施〜

動物由来細胞から食品や原料などを作る「細胞農業」で持続可能な世界を目指すインテグリカルチャー株式会社(本店:東京都文京区、代表取締役CEO:羽生雄毅、以下「インテグリカルチャー」)は、公立大学法人滋賀県立大学(所在地:滋賀県彦根市、学長:廣川能嗣(ひろは广に黄)、以下「滋賀県立大学」)と株式会社エイゾス(本社:茨城県つくば市、代表取締役社長 河尻理恵子、以下「エイゾス」)と、インテグリカルチャーが独自に開発した新たな細胞培養技術「CulNet® system」(以下、「カルネット システム」)を使った培養肉(いわゆる細胞性食品)の製造におけるライフサイクル・アセスメント(LCA:Life Cycle Assessment)※1を確立するための共同研究を開始したことを発表します。

本研究では、培養肉の製造過程における環境負荷の定量的な評価や技術経済性分析(TEA:Techno-Economic Assessment)によって、カルネット システムの技術的なパフォーマンス及び経済的な実現可能性を評価する手法を検討し、培養肉の価値の定量化を目指します。
※1: ライフサイクル・アセスメント(LCA:Life Cycle Assessment)とは、ある製品・サービスのライフサイクル全体(資源採取―原料生産―製品生産―流通・消費―廃棄・リサイクル)又はその特定段階における環境負荷を定量的に評価する手法。

動物由来の細胞を培養して作られる培養肉は、家畜から生産される従来の食肉と比べて、温室効果ガスの排出や水資源の消費を抑制し、さらに土地の利用効率の向上に寄与する可能性があり、地球温暖化対策の一つとして期待されていますが、生産コストの低減が大きな課題になっております。こうした状況の中、インテグリカルチャーは、これまでにない培養肉の新たな生産方法であるカルネット システムの開発に成功しており、今回の研究では、カルネット システムが社会実装された際の環境負荷の客観的な検証などが成果として期待されます。

なお、本研究の役割分担としては、インテグリカルチャーがカルネット システムを用いた培養肉製造において、解析等に必要なデータを集積し、滋賀県立大学がこのデータを用いて、LCAとTEA指標の算定及び解析手法を確立します。また、エイゾスはAI技術を駆使して、細胞性食品を量産した際の評価手法の開発に必要な解析技術を提供します。

将来的に、本研究結果は、脱炭素社会を実現させるための排出者の行動変容を促すカーボンプライシング※2政策へ貢献できると考えています。
※2: カーボンプライシングとは、排出される炭素に価格を付け、排出量に応じて企業などがコストを負担する温暖化対策の仕組み。

【研究の概要及び参加機関等の紹介】
・研究内容: 培養肉製造に関するLCA及び技術経済性分析(TEA)手法の確立
・研究目的:カルネット システムを用いて培養肉を製造した際のLCA及びTEAの指標及び解析方法を確立した上で定量的な評価を行い、培養肉の産業化による効果を検証
・研究期間: 2022年11月1日~2023年10月31日の1年間

■ 公立大学法人滋賀県立大学 < https://www.usp.ac.jp/ >
環境科学部、工学部、人間文化学部、人間看護学部の4学部13学科、また、大学院は4研究科9専攻からなり、人文科学、社会科学から自然科学までを学ぶことができる総合大学です。

開学以来「人が育つ大学」「キャンパスは琵琶湖。テキストは人間。」 をモットーに掲げ、「環境と人間」をキーワードとし、フィールドワークなど実践的な教育の充実に力を注いできました。また、「地域に根ざし、地域に学び、地域に貢献する」大学として、 地域とのつながりを強めるとともに、滋賀の学術の中心としての地歩を着実に固めてきました。

今後もこの精神を継承しつつ、「地域貢献大学のリーディングモデル」と「国際通用性のある知と実践力をそなえた人が育つ大学」を目指していきます。

■ 株式会社エイゾス < https://aizoth.com/ >
2014年8月に創業し、研究開発分野を主要顧客としたAI解析プラットフォーム「Multi-Sigma®」や、AI・LCA評価等のデータ解析に関する技術コンサルティングサービスを提供しております。

Multi-Sigmaは、「誰でも、どこでも、どのようなハードウェア上でも」ご利用頂けるノーコードのSaaS型AI解析ツールで、現場の人に最先端のAI解析技術を与え、研究開発効率を飛躍的(100倍以上の事例も)に高めることが可能です。必要最小限の実験データから、深層学習を用いて予測・要因分析・多目的最適化を実施し、膨大な製造条件の組合せの中から、多数の目的を同時に満たす最適な製造条件をAIが探索します。

また、研究開発段階の情報を元に、将来技術が大規模実用化されたときのコスト・環境影響を推計するEx-ante LCAの手法開発について、世界で最も進んだ取り組みを行っており、国の研究開発プロジェクトにおいて、Multi-SigmaとEx-ante LCAを組み合わせた研究なども行っています。

■ インテグリカルチャー株式会社 < https://integriculture.com >
独自開発の新たな細胞培養技術「CulNet®(カルネット) システム」を、食品・素材・皮革などを作るバイオ資源生産技術のプラットフォームとして開発し、様々な分野での活用を目指しています。

カルネット システムは、動物体内の臓器間相互作用を模した環境を擬似的に構築する装置です。本技術は、動物細胞を大規模かつ安価に培養可能で、培養肉を始めとする様々な用途での活用に関する研究を進めており、培養肉の高コストの大きな要因である成長因子(血清様成分)の内製化は既に実現しています。高価な成長因子の投入が不要になったため、培養肉生産コストの大幅な節減が可能となり、現在は培養フォアグラの社会実装に向けた取り組みを加速しています。